大分県杵築市の行政書士、工藤正寛です。
遺言書のお話をすると、「大切なのはわかっているけれど、うちには縁のない話」
と思われている方が多いように感じています。
そこで今日は「遺言書でよくある勘違い」について書いてみたいと思います。
一番多いお答えが、「うちは遺言書を書くほど財産がないから・・・」
というものです。
確かにテレビドラマの影響のせいか、遺言書はお金持ちの方が書くものという
イメージが強いですね。
ところが、遺産分けの話し合い(遺産分割協議)がまとまらず
家庭裁判所の調停までもつれたケースで、争われた遺産額の74%が
5,000万円以下、そのうち1,000万円以下が30%もあります。
普通の会社員であった方でも、遺産額が1,000万円はあるという方は
多いのではないかと思います。
分ける財産が少ないからこそもめる可能性が高いといえます。
また、遺産が不動産だけという場合も、不動産(特に建物)は現実的に分けることが
難しいものなので、不動産をもらえなかった人にどのように配慮するのかが
相続争いにならないためにとても大切なことになります。
「遺産は少ないほど相続でもめる」
つぎは、「自分は元気だから遺言書を書くのはまだ早い」というものです。
これもテレビドラマの影響のせいか、遺言書は亡くなる前に書くものという
イメージを持たれている方が多いと思われますが、
「遺書」と「遺言書」全く違うものなのです。
「遺書」は、自分が自ら命を絶つことを宣言するものですが、
「遺言書」は、自分の希望や感謝の気持ちを伝え、愛する家族を守るためのものです。
そして、遺言書を書くという大切なイベントを成し遂げた方には、
これからの人生を自分のために満喫し、元気で過ごしていく。
そういうためにあるものだと思います。
遺言書を書ける条件として
①満15歳に達していること
②遺言能力があること
この2つが必要です。
②の遺言能力は、遺言を書いてどんなことが家族に影響を及ぼすかという
判断能力がなくなってしまうと、遺言を書いても無効になってしまうということです。
認知症になってしまった場合には、有効な遺言書を書けなくなる可能性が高くなります。
遺言書は、遺言能力があるうちはいつでも書き直すことができます。
手遅れになる前に書いて、考えが変われば書き直す。これに尽きます。
「遺言書は早めに書いて、考えが変われば書き直す」
そして最後は、「うちは家族の仲がいいから・・・」です。
このお気持ちとてもよくわかります。
誰もが円満の相続を望みますし、うちに限って相続争いなんてと思いますよね。
ところが、今ご家族の仲がいいのは、あなたという存在があるからかもしれません。
ご家族の「扇の要」である親の存在が、ご家族をしっかり束ねているから
問題がないのではないでしょうか。
その支えている方がいなくなってしまうと、ご家族の力関係が変わり
バランスが崩れてしまうおそれがあります。
相続は大きな財産をもらえるめったにない機会です。
普段仲の良いご兄弟でも、それぞれの家庭の事情で突然に経済事情が変わって
しまうことがあり、財産の取り合いになる場合もあります。
遺言書であなたのご意思や財産を分けた理由をしっかり伝え
「家族仲良くやっていくように」といった言葉を残しておきましょう。
「残された家族がバラバラにならないように、遺言書で家族をしっかり束ねてあげる」
今日も少し長くなりましたが、読んでいただいてありがとうございました。
参考になればうれしく思います。
お時間のある時に、こちらもご覧ください。
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